「グルメが彩るものがたり 美味しい古典文学」展で食文化を知る

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美術展・写真展
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国立公文書館「グルメが彩るものがたり 美味しい古典文学」展を観てきました。

国立公文書館では写真撮影OKです。ただし、フラッシュ・三脚NGなどの注意事項がありますので、確認の上、撮影してください。

展示内容

古事記、日本書紀、万葉集、そして徒然草に太平記、誰もが知る古典作品では食にまつわる記述が多く見いだされる。そこから、当時の人々の生活や趣味嗜好まで垣間見えてくる。そんな文献を集めた企画展。

公式サイトによると、

――食べることも、文学だ。
毎日のありふれた食卓はそのほとんどが記録に残ることはありません。しかし、それらがあえて和歌や物語に書き留められるときには、ただ空腹を満たすための行為としてだけではなく、 読む者の心を動かす特別な意味を持つことになります。本展では、古典文学に描かれた「食」の多彩な姿を、当館所蔵の貴重な資料からご紹介します。

展示会情報:国立公文書館

とのこと。

展示構成は以下の通り。

  • はじめに ― 食の起源
  1. 食を詠む万葉人
  2. 王朝の食卓
  3. 食に貴賤あり?
  4. 神と仏と食
  5. 酒は呑んでも
  • さいごに ― 今も昔も

主に、紅葉山文庫(江戸幕府の文庫で、のちに明治政府に引き継がれた)の旧蔵書が展示に用いられ、完本としては現存最古の資料もある(日本書紀など)。

万葉集では大伴家持が、痩せた知人(石麻呂)に「夏痩せには鰻が良いので獲って食べろ」と詠っている。痩せた相手をからかっている。この時代から、食事と健康に関して人々は関心を持っていたのが分かる。現代の我々もよく気にする「XXXにはYYYが効く」という感覚と同じだ。

醍醐天皇の勅命によって編纂された古今和歌集では、光孝天皇の「君がため春の野に出て若なつむ我衣でに雪は降りつ々」の歌が掲載されている。当時、若菜を春に食す習慣があり、若菜摘みは春の野遊びだった。

平家物語には、平清盛が平家一門を率いて熊野参詣に際して船で海を渡っていた時の逸話が載っている。
突然、鱸が跳ねて船に飛び込んできた。その鱸をみなで食べたところ、その後、平家は大きく飛躍し、繁栄した。鱸はめでたい神意の表れだったのだ。

太平記には、後醍醐天皇が無礼講の酒宴を設けている様子が描かれている。実は酒宴に隠れて幕府討伐の謀議をしていたのだが、事が露見し、天皇に組みした貴族たちが捕らえられてしまった。

感想

食(習慣)は、当時の人々の価値観や常識に直結している。食に対する想いを知ることは、その時代の“Common Sense”を知ることだ。
源平盛衰記で、木曽義仲が公卿にに供した食事が粗野であると描くことによって、義仲自身を貶めている。食習慣をたとえに引き出すことによって、分かり易い描写となっているのだろう。これは現代の我々にも理解できる逸話だ。
伊勢物語では、「自分で飯を盛る女性の様子を見て、好意を寄せていたのに幻滅した」という話が載っていた。その時代、身分ある人は使用人に食事の支度をさせるのが当たり前で、もっと言えば食事自体が卑俗なものという感覚だったそうだ。こちらはちょっと理解しにくいかな。現代とは価値観・常識が異なってしまったものなのだろう。

あと、逸話として「芹を摘む」ことがなぜ、「叶わない想い」を表すようになったのか、その歴史的経緯がよくわかったりもした。

歴史や文学を理解するには、単純に出来事だけではなく、その時代の人々の常識・価値観を理解していないと「なぜそういうことをしたのか・しなかったのか」が理解できないだろう。そして、そんな常識・価値観を知るためには食に関しての考え方・態度を知ることも一つの方法だと言うことがよくわかった。
知っている話もあったけど、知らない方が多かったな。今回も勉強になりました。

そうそう、シン・ゴジラの“ヤシオリ作戦”の元は、古事記の八岐大蛇の物語だと思うのですが、それも展示されてました。「八塩折酒(ヤシオリノサケ)」で八岐大蛇を酔わせ、須佐之男命は首を切り落としたって話です。何回も醸成させた酒のことだそうで、古代から酩酊するほど強い酒が造られていたんですね。今で言えば、ウォッカのスピリタスみたいなものだったのかな。

美術展情報

  • 会期 : 2020/10/3(Sat) – 11/29(Sun)
  • 開館時間 : 09:15 – 17:00
  • 休館日 : 会期中、休館なし
  • 料金 : 無料
  • 公式サイト : 展示会情報:国立公文書館
  • 参考書

コメント

  1. 中野潤子 より:

    これは行きたくなりますね。11月七五三に合わせて思い切って行こうかな。

    • bunjin より:

      隣には国立近代美術館もありますから、合わせてどうぞ!

  2. 東雲 より:

    万葉集=花、もしくは色恋(笑)・・・、というイメージだったので、
    「へ~」「なるほど・・・」と興味深く読ませて頂きました。
    出かけてみたいな、と思うのですが、どうもまだ、電車に乗って
    都内に出かける事が 怖いというかなんというか・・・。

    • bunjin より:

      万葉集はかなり“庶民目線”の歌も多いようですよ。

      国立公文書館、幸か不幸か、そんなに混むことはないので、安心して観られますよ。電車が空いている時間帯にどうぞ。

  3. 中野潤子 より:

    飛行機とりましたから、間違いなくいけます。