三菱一号館美術館の「開館10周年記念 1894 Visions ルドン、ロートレック展」ブロガー特別内覧会に参加してきました。
展示内容
三菱一号館美術館が開館十周年記念として開催した今回の企画展。公式サイトの説明によると
英国人建築家ジョサイア・コンドルの設計により、三菱一号館が丸の内の最初のオフィスビルとして建てられた1894(明治27)年、日本は近代化の道を歩き始めていました。
本展の見どころ|開館10周年記念 1894 Visions ルドン、ロートレック展|三菱一号館美術館(東京・丸の内)
(中略)
本展は1894年を軸に、西洋と東洋、油絵とリトグラフ、芸術と工芸という古いカテゴリーを超えて育まれた新しい感性の芸術家のヴィジョンを通して、躍動する時代の息吹をご紹介いたします。
とのこと。そう言えば、併設されているカフェは「Café 1894」だし、ミュージアムストアは「Store 1894」という名前でしたね。
展示構成は以下の通り。
- Chapitre 1 19世紀後半、ルドンとトゥールーズ=ロートレックの周辺
- Chapitre 2 NOIR—ルドンの黒
- Chapitre 3 画家=版画家 トゥールーズ=ロートレック
- Chapitre 4 1894年 パリの中のタヒチ、フランスの中の日本
- Chapitre 5 東洋の宴
- Chapitre 6 近代—彼方の白光
第一回印象派展(Wikipediaによると、正式名称は「画家、彫刻家、版画家などによる共同出資会社の第一回展」とのこと)が開催されたのが1874年。その後、1886年までに都合八回の印象派展が続き、多くの画家が作品を発表している。
そして、ドガによる「ラファエルロ『アテネの学園』の模写」や、ルノワールの「長い髪をした若い娘」、ベルナールの「ポンタヴェンの市場」など、新たな時代の作品が生まれていった。
一方、フランス南西部ボルドー出身のオディロン・ルドンは、木炭によって作品を描いていく独自の世界を展開し、のちに「ルドンの『黒』」と呼ばれるようになった。
パリの夜の街を描いていったのがトゥールーズ=ロートレックだ。シャンソン歌手「アリスティド・ブリュアン」を描いた作品はポスターにもなり、パリの街を飾っていった。
当時、多くの画家が日本絵画から影響を受けるようになり、ジャポネスクト呼ばれる潮流となっていく。木版画も多く製作されるようになり、ヴァロットンも多くの版画作品を生み出している。
ロートレックもリトグラフ作品を製作し、一方でゴーギャンは木版画に拘り、自ら刷り作業も行っている。
ロートレックは、娼館で暮らす女性たちの日常を描いたり、一方で「博物誌」の中ではカタツムリや蛙などの挿絵を描いたりして、その表現の幅を広げていった。
そんなフランスへ、日本からも多くの画家が“留学”をし、西洋絵画の技法を身につけていった。師事した画家が異なれば、習う画風もずいぶんと異なっていて、多様性を生むこととなった。
ルドンは大きく画風を変えた。「黒」の世界から離れ、色鮮やかな世界へと転身を遂げたのだ。
パトロンの要望で壁画も作成しているが、今回出展されている「グラン・ブーケ」は普通の壁画と異なり、大きなキャンバスを使って描かれた“パステル画”なのだ。
この“壁画”は十六枚から成っていて、パトロンの邸宅を飾っていた。現在、この一枚は三菱一号館美術館が所蔵していて、残り十五枚はパリのオルセー美術館が所持している。
ルドンは屏風絵も描いている。ナビ派の画家は、当時は一段低く見られていた装飾芸術を評価し、自らもこのように積極的に作品を作っていた。描かれた花々は幻想的だ。
感想
COVID-19感染者数が増大する中、トークショーは中止となったものの、内覧会だけは開催してくれたことにまずは感謝。お蔭でゆっくりと観賞できました。
印象派の作品ももちろん好きですが、その後に現れた個性派揃いのナビ派の面々、ハマっています。ロートレックは以前から日本でも有名だったのでお馴染みだったけど、ルドンはザ・ミュージアム | Bunkamuraの企画展で知ったかも。あと、ヴァロットンは三菱一号館美術館か。
そして今回の企画展はナビ派のロートレック、ボナール、ゴーギャン、ルドンの作品群をコレクションに持つ三菱一号館美術館の“お宝”勢揃いという感じ。この美術館らしい企画展です。
ルドンの「黒」の時代から「色彩」の時代へとがらりと変わる、その両方を一度に観られたのも楽しかった。
それにしてもあの不気味で陰鬱な黒い世界は、閉塞感漂う今の時代に改めて観ると共感というか、心の奥底で自然に共鳴してしまいそう。「沼の花」は孤独感、疎外感、憂鬱感のオンパレードだ。余り見入っていると、それこそ沼に引き込まれてしまいそう。気を強く持って観ないといけない。
ロートレックの「博物誌」の挿絵も面白かった。前に観たことがあっただろうか。ロートレックというとムーランルージュの華やかな世界や、ブリュアンのようなちょっと場末の雰囲気も漂う人々を描いた作品が思い浮かぶが、蛙やカタツムリ、そしてロバなどをかなり丁寧に描いているのに驚き。「博物誌」は、「にんじん」のジュール・ルナールの作品。どういう経緯でロートレックが挿絵を描くに至ったか分からないが、子供の頃から生き物を描くのが好きだったそうで、知らなかった一面を知れた。
しかし、この観察眼を持って娼館の女性たちの日常を追って、いや描いていたかと思うとちょっと怖いかも。。。
下記の通り、自分のスマートフォンに音声ガイドをダウンロードして聴くことができるので、観終わったあとも復習ができるのが良かった。その分、料金はお高めになっているけど、それだけの価値はあるでしょう。
外出が憚られる状況に再びなってきてはいますが、しっかりマスクして観に行きましょう。こういう時だからこそ、絵画の世界に浸ってリラックス or リフレッシュすることも必要ですよ。年明けまでやっているので、頃合いを見計らってどうぞ。
美術展情報
- 会期 : 2020/10/24(Sat) – 2021/1/17(Sun) 途中、展示替えあり
- 開館時間 : 10:00 – 18:00 (祝日を除く金曜と会期最終週平日、第2水曜日は21:00まで)
- 休館日 : 月曜日, 12/31, 1/1(祝日の月曜日と、11/30, 12/28, 1/4は開館)
- 料金(音声ガイド付き) : 一般 2,000円 、 学生 1,000円、 小中学生 無料
- 音声ガイド : 自身のスマートフォンにアプリをダウンロード&インストールする必要があります。事前にインストールしておくと良いでしょう。ただし、会場で渡されるコードを入力しないと動きません。
- 参考作品(CD)
コメント
この美術館はいったことがああります。毎年この、3軒先でクラス会をします。誰かのお世話で借りられるようです。その時、立ち寄ります。こんないいのに巡り合うことはないですが。今年中止にならなかったら行けたと思うと残念です。
おお、お洒落なところでクラス会をされるんですね。カッコいい!
また往来が厳しい状況になってしまったようで。ワクチンが広まるまではこんな調子が続くのでしょうか。