国立科学博物館で「メタセコイア 生きている化石は語る」展を観てきた

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美術展・写真展
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国立科学博物館 National Museum of Nature and Science,Tokyoで開催中の企画展「メタセコイア -生きている化石は語る」を見てきました。

この企画展では写真撮影OKです。ただし、三脚・フラッシュNGなどの注意事項には従ってください。

展示内容

本企画展の主旨は、公式サイトの説明によると

「生きている化石」と呼ばれるヒノキ科の針葉樹メタセコイアが三木茂博士(1901年~1974年)によって命名されてから2021年で80年を迎えます。
 本展では、メタセコイアの発見や保護をめぐる研究者たちの努力を紹介するとともに、植物と地球環境の変化の関わりを解説します。また、「生きている化石」の保護活動の紹介を通じて、現代の私たち人類が直面する環境問題などの課題にも向き合います。

企画展「メタセコイア -生きている化石は語る」(2021(令和3)年1月26日(火)~4月4日(日))- 国立科学博物館

とのこと。

展示構成は以下の通り。

  • 序章 メタセコイアってどんな植物?
    1. メタセコイアの一生
  • 第1章 メタセコイアの発見
    1. メタセコイア属の設立
    2. メタセコイアは生きていた!
  • 第2章 メタセコイアの生きた時代 ―日本のメタセコイア化石産地―
    1. 東京西部のメタセコイア化石林
    2. 琵琶湖周辺のメタセコイア化石林
  • 第3章 メタセコイアはなぜ日本から絶滅した?
    1. 地質時代のメタセコイア林
    2. 北極圏のメタセコイア林
    3. 新生代の気候変化とメタセコイア林の衰退
    4. メタセコイアが日本から消えた⁉
  • 第4章 メタセコイアの現在・未来
    1. メタセコイアを守る
  • 終章 メタセコイアから何を学ぶ?

メタセコイアは、今ではそんなに珍しい樹木でもなくなったかな。東京でも葛飾区の水元(みずもと)公園、小石川植物園、そして街中でも見られるほどポピュラーな存在になっています。
そんなメタセコイアですが、以前は絶滅種と考えられていました。さらには、他の種と混同されてもいたのですが、80年前に三木茂博士がある針葉樹の化石を新種として同定し、メタセコイアと名づけたのでした。

これは現生するメタセコイアの切断標本。

現生メタセコイアの切断標本

そしてこちらが化石。

メタセコイアの化石

三木博士は球果(松ぼっくり)の化石を他の針葉樹の物と比べ、構造が違うことに気が付きます。また、葉の付き方が左右対称(同種と思われていた他の針葉樹は互い違い)などの特徴からも、この化石が新種であると断定したのでした。

こちらは現生するメタセコイアの球果。確かに「松」の松ぼっくりとはちょっと違いそうですね。

メタセコイアの球果(松ぼっくり)

三木博士が作成したメタセコイアの標本が展示されています。

三木博士が研究したメタセコイアの標本

三木博士がメタセコイアの化石を研究していた頃は、絶滅種だと考えられていました。当時、どこにもそんな樹木が生えているのは知られていませんでしたから。
ところが、中国四川省(現在は湖北省に編入)の奥地で林務官の王氏が現生しているメタセコイアを発見したのでした。

メタセコイアが生き残っていたことを報告する論文が展示されています。

原生していたメタセコイア発見を報告した論文

発見された現生メタセコイアの標本。

自生種のメタセコイア

その後、アメリカ経由で日本にも苗木が送られ、植物園その他で栽培されるようになり、現在に至っています。

メタセコイアは針葉樹だけど、冬には葉が落ちる落葉樹でもある、杉などとは異なった特徴を持っています。温暖な気候を好み、新生代前半にはアメリカや、ヨーロッパ、そしてロシアや北極圏でも、水辺を中心に非常に繁茂していました。しかし、四千万年前頃から気候は寒冷化に向かっていきます。その変化に伴い、大陸ではメタセコイアは生息地を失い、絶滅していきます。
ただ、日本では数百万年前までメタセコイアの林が存在していて、古琵琶湖の周辺で生き残っていました。ですが、結局は日本のメタセコイアは絶滅してしまいます。

感想

なんでこんなにもメタセコイアが注目されるのかわからなかったが、この企画展を見て納得。発見(化石から、新種の植物と同定)そして命名したのが日本人だからなんですね。
さらには、気候が寒冷化するに従って世界中でメタセコイアが絶滅していく中、比較的最近まで日本で生き延びていたのも注目されるポイント。
そして三点目は、中国で発見された自生種(いわゆる、生きた化石)が早くに日本に輸入されて栽培されたこと。特に、昭和天皇が皇居内で育てたことも人々の関心を引いた点のようです。

「生きた化石」というと“シーラカンス”を思い浮かべますが、確かにメタセコイアも馴染み深い存在。私の住んでいる世田谷区でも公園やらなんやらで見かけます。針葉樹なのに紅葉して、針のような葉っぱが落ちているのを見た記憶が。その時は特にピンと来ていなかったけど、他の針葉樹とは違っていますね。

温暖湿潤な気候を好むそうで、現代日本には合っていたのでしょう。でも、またまた危うくなってきそうです。他の種も同じですが、森林伐採で生息地は狭まってきています。そして、前回は寒冷化で絶滅した訳ですが、今回は地球温暖化・気候変動によって、暑すぎて死んでしまうかも。

メタセコイアの歩んできた歴史を知ることで、地球の移り変わりも学べたし、また未来に対して今、何を為すべきかも改めて考えるきっかけにもなったのでありました。

久しぶりに国立科学博物館に行ったんですが、毎回、勉強させてもらってます。面白かった。
そして、ハチ公にも再会できました。

企画展情報

コメント

  1. 中野潤子 より:

    生きている化石という言葉でまず惹かれますね。オンラインで事前予約ですか。

    • bunjin より:

      上野動物園は休園になっちゃっているので、事前予約が必要でも、開いてくれているだけいいのかも知れません。

  2. taeko より:

    メタセコイア、昭和記念公園でも何本か並んでいました。
    一本でもシンボルツリーですが、複数本並ぶと存在感がありますね。
    古代からある種類なんですね。東京都は閉まっている施設が多い中、博物館が空いているのはうれしいですね。

    • bunjin より:

      国立西洋美術館は改装中だし、上野もちょっと寂しい雰囲気でした。

      イチョウも然り、身近な存在なのに実は・・・ってのが知れて楽しい企画展でした。