恵比寿ガーデンプレイスにある東京都写真美術館で「没後50年 木村伊兵衛 写真に生きる」展を観てきました。
展示内容
公式サイトによると、
本展は日本の写真史に大きな足跡を残した写真家・木村伊兵衛(1901-1974)の没後50年展として、その仕事を回顧するものです。1920年代に実用化が始まったばかりの小型カメラに写真表現の可能性をいち早く見出し、それを駆使した文芸諸家のポートレート、あるいは東京下町の日常の場面を素早く切り取るスナップショットで名声を確立しました。
東京都写真美術館
(中略)
没後50年に合わせ、本展では最近発見されたニコンサロンでの 木村伊兵衛生前最後の個展「中国の旅」(1972-1973)の展示プリントを特別公開します。
とのこと。
展示構成は以下の通り。
- 第1章 夢の島―沖縄
- 第2章 肖像と舞台
- 第3章 昭和の列島風景
- 第4章 ヨーロッパの旅
- 第5章 中国の旅
- 第6章 秋田の民俗
- 第7章 パリ残像
若き日に東京で沖縄民謡を見て衝撃を受け、すぐに沖縄へ渡航し(当時は船旅だったんですね)、市場の風景や働く人々を被写体に作品を作成する。これが木村伊兵衛を世に知らしめた最初の写真たちだった。特にポーズを付ける訳ではなく、そこにいる人々の姿をそのままに写している。それでいて写された人々は演技をしているかのように物語を語っているように見える。そんな作風は最初期から既に確立していたようだ。
戦後の東京の様子を写した作品群も、バラックの露店に群がる人々や、ぼろぼろの服を着ながらも満面の笑みを浮かべて遊んでいる子どもたちなど、飾らないそのままの様子を見せている。それらは「記録」でありながら温かみを感じられた。
彼のまなざしはヨーロッパや中国においても変わらなかったようだ。国は違ってもその土地に生きる人々の生活には共通の何かがあって、彼の目を通してそれが見えてくるような気がする。
「秋田の民俗」の章では、よく知られた「板塀 追分」や「秋田おばこ 大曲」などが展示されている。
感想
私が木村伊兵衛の名前を知ったのは、朝日新聞社が創設した「木村伊兵衛写真賞」から。賞の名前になっているくらいだから凄い人なんだろうと思っていたところで、同じ東京都写真美術館の写真展(収蔵品展だったかな?)で「本郷森川町」や「秋田おばこ」などの作品を観て、なるほどねぇと感心したのでした。
タイトルにある通り、木村伊兵衛が没したのは1974年。今回展示されている作品は当然ながらその年よりもさらに数十年前のもの。戦前の沖縄の風景は時代劇の一場面のようでもあるし、戦後の東京の様子も今とは全く違った景色だ。でも、なぜかそこに写っている人々の表情からは今と変わらないものが感じられる。人間、そんな数十年で変わるもんじゃないのだから当たり前と言えば当たり前だが、それでもこの親近感はやっぱり不思議。
木村伊兵衛自身は「報道写真家」を自称していたそうで、報道写真と言えば同時代性が重要。確かに、その時代の様子や、その国(パリや中国など)のその時の雰囲気を今に伝えてくれている。でも、なぜか私には時代の違いと言うよりは「変わらないなぁ」と感じられることの方が強かった。人々の生活という普遍的なものが通底していて、そこでは真剣な表情も見せるし、笑い転げているし、すれ違う人に対しては無関心でいる。だからこそ、彼の作品は後世にも残るし、賞の名前にもなっているのだろう。
最近発見されたというニコンサロンの個展の作品群はオリジナルプリントが展示されていました。経年変化でセピア色を帯びたゼラチンシルバープリントの作品群は温かみが増し、中国という異国の風系なのに、なぜか懐かしさを感じてしまいました。
休日に観に行ったのでだいぶ混んでいました。もう一度、静かな時を狙って観に行きたいな。
写真展情報
- 会期:2024/03/16 (Sat) – 2024/05/12 (Sun)
- 開館時間 : 10:00 – 18:00(木曜日、金曜日は20:00まで))
- 休館日: 月曜日、5/7 (4/29, 5/6は開館)
- 料金 : 一般1,200円 学生 1,000円 中高生・65歳以上 800円 小学生以下および都内在住・在学の中学生は無料
- 公式サイト : 東京都写真美術館
- 関連図書 :
コメント
今回の状況で是は見に行けます。いい㎡のご紹介いただきありがとうございます。
ぜひ、ぜひ。
他にも「記憶:リメンブランス 現代写真・映像の表現から」展も観て、こちらも楽しめました。ただ、内容を文章にして伝えるのが難しく、ブログ記事にはしていないのですが。。。