智美術館「走泥社再考 前衛陶芸が生まれた時代」展(後期)

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走泥社再考 美術展・写真展
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菊池寛実記念 智美術館でSNSユーザー向け「走泥社再考 前衛陶芸が生まれた時代」展鑑賞イベントに参加してきました。

この企画展では一部作品を除いて写真撮影OKです。撮影NGとなっている作品を確認しつつ、注意して撮影してください。
また、三脚・フラッシュNGなどの注意事項にも従ってください。

展示内容


走泥社は、1948年に京都で結成された前衛陶芸家(芸術家?)集団です。八木一夫、鈴木治らを中心に、伝統的な「用の美」にとらわれない、芸術性の高い「オブジェ」としての陶芸を目指したそうです。ただ、陶芸だけではなく、ガラス作家なども一緒に活動していたとのこと。

巡回展の最後の展示がこちらだそうで、京都国立近代美術館などを経てきたとのこと。京都では一挙に約180点の作品が展示されていたのですが、我らが智美術館は少々コンパクト。そのために前期後期に分け、さらにその中でも展示替えをしての開催となっています。
展示構成は以下の通り。

  • 第1章: 前衛陶芸の始まり 走泥社結成とその周辺
  • 第2章: オブジェ陶の誕生とその展開
  • 第3章: 『現代国際陶芸展』以降の走泥社

今回観たのは後期(京都では第3章に当たるもの)。それでも、前期(第1章、第2章)の振り返りとして三点だけ、展示されていました。その一つがこちら。八木一夫「ザムザ氏の散歩」。走泥社と言ったらこれ、前衛陶芸と言ったらこれ、という代表作なのだそうです。轆轤を使って円柱を作っているのに、“使えない”形に仕上げているのがミソ(?)なのでしょう。カフカの「変身」の主人公がこんな姿をしていたかどうかは分かりませんが。

走泥社再考

さてここからが第3章。展示スペースに入りきらなかったからか、階段下スペースにまずはこの作品が。里中英人「シリーズ:公害アレルギー」。蛇口が捻られ、左端のものは取れてしまって何かが流れ出ています。もちろん、全部が焼き物ですが。

走泥社再考

何かのようであって、何でもない、オブジェとしか言いようのない作品群が一杯。

走泥社再考

人? 古代の埴輪のようでもあり、エジプトの神の像のようでもあり。

走泥社再考

抽象化、シンプル化された何か。

走泥社再考

器にしろ、箱にしろ、蓋がされていると中を見たくなるのが人の性というもの。ましてや、ちょっとめくれ上がっていて、ご丁寧に矢印付きで「OPEN」と書かれた日には。

走泥社再考

焼き物ではなく、ガラス作品。実際は組み作品でこのような物体が何点かあるのだそうです。単純なシンボリズム的観点で見ると男根のようにも見えてしまいますが、さて何を表しているのでしょう?

走泥社再考

そう思うと、こちらは女陰?
ではなく、パンケーキにナイフを入れた(入れようとした)時の、あのふにゃっと言う柔らかな反発を表しているようです。焼き物という硬い物体なのに、確かに柔らかさも伝わってきます。あら不思議。

走泥社再考

こちらも組み作品。紙(?)飛行機は焼かれようとしているのか? でも、焼き物なんだからもう焼かれているはず? 焼かれても形を保つ彼らは何者?

走泥社再考

陶芸作品を観て「気持ち悪い!」と思ったのは初めてかも。イサム・ノグチも似たような作品を作っていた記憶があるけど、こちらは丸いのが潰れていて、しかも中からゾロゾロと。。。うぅぅっ、気持ち悪い。辻勘之「虫」。タイトルもそのままだ。

走泥社再考

トライポフォビア(集合体恐怖症)の人には耐えられない作品かも。なんか、一杯溢れ出てきちゃってます。川上力三「偽証」。

走泥社再考

グロテスク。よく見ると、中にも顔が。真実の顔を暴き出すということか。佐藤敏「バットマン」。

  • 走泥社再考
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こういう作品はちょっと安心して見られる?!いや、それともエロティシズムの極み?内側の赤がつま先に漏れ出ているようなところが艶めかしさを増している。

走泥社再考

感想

これまでも智美術館の企画展で、「なんだこれ?」という陶芸・工芸作品を数多く観てきました。が、今回はそれらを越える、エキセントリックで、前衛的で、ロックで、パンクな作品が目白押し。いや、凄いですね。こんな芸術集団が戦後すぐに誕生していたとは驚きです。それも京都で結成されたというのがいかにもって感じがしてさらに良い。伝統を重んじながら(引きずりながら)、新たなものを貪欲に取り込んできた京都人らしい。そして、そんな活動を半世紀も続け、新たな“伝統”にしてしまったのだから。

よくよく観ると“写実的”な作品もあれば、“抽象的”な表現のオブジェもあり、土の質感を強調しているもの、そうでないものもある。同じ芸術集団と言っても作家の個性は様々なんだなというのも面白い。まあ、工房や学校のような組織ではなく、“印象派”のように個々の作家が刺激を受け合いつつ活動したのと似た感じだったのでしょう。

企画展のたびに、自分のお気に入り作品を見つける、と言うことをしています。そうすることで、観る楽しさが増しますし、色々な解釈やらなんやらに囚われずに観賞できるから。
で、今回はもう「虫」しかない。グロテスクな作品というのは絵画にせよ、彫刻にせよ、観る機会はあった。けど、生理的に気持ち悪い!と感じる作品はそうそうない。いや、これはもう優勝ですよ。

美術史を学ぶこともできたし、何よりも観たことない作品ばかりで楽しめたし、面白い企画展でした。一見の価値ありです。

美術展情報

  • 会期 : 前期:2024/4/20(Sat) – 6/23(Sun)、後期:2024/7/5(Fri) – 9/1(Sun)
  • 開館時間 : 11:00 – 18:00
  • 休館日 : 月曜日 (月曜日が祝日の場合は開館し、翌火曜日が休館日),4/30, 5/7, 7/16, 8/13, 7/29-8/1
  • 料金 : 一般1100円、大学生800円、小・中・高生500円
  • 公式サイト : 最新の展覧会|展覧会|菊池寛実記念 智美術館
  • 参考書 :

コメント

  1. 中野 潤子 より:

    おもしろい作品が並んでしますね。グロテスクな感じのものもありましたが。