東京ミッドタウンにあるサントリー美術館で「尾張徳川家の至宝」展を観てきました。
この企画展では写真撮影NGです。
展示内容
公式サイトの説明によると
将軍家に連なる御三家の筆頭であった尾張徳川家に受け継がれてきた重宝の数々を所蔵する徳川美術館。家康の遺品「駿府御分物」をはじめ、歴代当主や夫人たちの遺愛品、刀剣、茶道具、香道具、能装束などにより、尾張徳川家の歴史と華やかで格調の高い大名文化をご紹介します。屈指の名品として知られる国宝「源氏物語絵巻」と、三代将軍家光の長女千代姫が婚礼調度として持参した国宝「初音の調度」も特別出品される貴重な機会となります。
とのこと。
展示構成は以下の通り。会期中、展示替えがあります。
- 第1章 尚武 もののふの備え
- 第2章 清雅 ―茶・能・香―
- 第3章 求美
- 特別公開 国宝 初音の調度
- 特別公開 国宝 源氏物語絵巻
尾張徳川家は、徳川家康の九男である徳川義直を藩祖とする家系。徳川義直は大坂冬の陣で初陣を飾り、続く夏の陣にも参戦している、合戦を実体験として知っている殿様。しかも、尾張の地は西国に対しての“前線”となる要衝の地。そのため、「もののふの備え」は代々に渡って怠りなかったようです。
武具、刀剣、陣中道具の数々が出展されていました。義直は毎年のように鎧兜を新調していたそうで、マニアックな人だったのかも。「銀溜白糸威具足」は立物(たてもの)が真っ赤な日の丸で、なかなかお洒落。“妖刀”かどうかは分かりませんが、村正の銘のある刀は不思議な刃文を帯びていました。
そんな尾張徳川家は武芸だけではなく、文化面でも格式高く、五摂家との婚姻関係も深いことから、茶や能、そして香なども盛んだったようです。茶道具では名物と呼ばれる道具類が数多く残されていて、千利休作と伝わる茶杓「虫喰」などが展示されていました。
また、歴代藩主は能を好み、徳川義直は喜多流や宝生流を庇護し、その発展に寄与したとのこと。数々の能面や衣装、帯、楽器(小鼓、大鼓、笛)は今も色褪せることなく優美さを持っていました。
香炉などの香道具は細かな細工な見事で、セット(香炉や香木入れ、火箸などなど)で並んでいると贅沢品だというのがよくわかります。また、蘭奢待(織田信長が切り取った奴とは別物)などの香木そのものも展示されていて、今の時代にまで残っているほど貴重だったんだなと納得。
国宝「初音の調度」は、三代将軍徳川家光の長女千代姫が数え3歳で尾張徳川家二代光友に嫁いだ際の婚礼道具。源氏物語の「初音」をモチーフにした装飾が為されたもので、旅眉作箱(携行用化粧道具箱)と将棋盤が展示されていました。金銀をふんだんに使った蒔絵は見事で、精緻な細工がすごい。
もう一つの国宝である「源氏物語絵巻」は、尾張徳川家に伝来した絵巻で、2016年に修復が為されて絵巻として蘇ったものだそうです。尾張徳川家のお姫様たちも愛読していたのでしょうか。
感想
さすがは徳川御三家、お宝のオンパレードという感じでした。能衣装や香道具などはもちろん、鎧兜や刀装具なども装飾が細かい。胸板も細かな刺繍が施されているし、刀の鐔(つば)や笄(こうがい)も家紋やら龍の意匠やらで飾られていました。武力とともに経済力も見せつけて、徳川の世を守っていくぞ、という気概がそこには込められていたのでしょう。
一方で、婚礼道具を筆頭に、女性たちが愛用し、楽しんだであろう道具たちも見応えがありました。貝合のセットは嫁入り道具の筆頭だったとかで、婚礼の行列の先頭がこれを運んだとか。貝がらに描かれた絵もきれいでしたが、貝桶の蒔絵もお見事。大河ドラマ「光る君へ」でも貝合わせで遊んでいる様子がありましたが、江戸時代のお姫様たちもこれで遊んでいたんでしょうね。なんとも優雅。まあ、お城暮らしは不自由も多かったでしょうけど。
二百六十年余り続いた江戸時代。明治になっても尾張徳川家は侯爵家となり、三百年以上の歴史を誇っている。そんな家系だからこそこれだけのお宝が今の時代にまで受け継がれ、残されてきたのでしょう。源氏物語絵巻に至っては製作されたのが十二世紀前半と推測されているそうです。
お蔭でこうして我々が実物を見ることができた訳で、ありがたいことです。
蒔絵・螺鈿を始め、装飾はとにかく細かいものばかり。単眼鏡必携ですよ。
美術展情報
- 会期 : 2024/7/3(Wed) – 9/1(Sun)
- 開館時間 : 10:00 – 18:00(金曜日は20:00まで)
- 休館日 : 火曜日
- 料金 : 一般 1,800円 、 学生 1,000円、 中学生以下 無料
- 公式サイト : 徳川美術館展 尾張徳川家の至宝 サントリー美術館
- 図録 : 3,000円
コメント
色々な至宝が見られるのでしょうね。現代まで続いて保存されてることが驚きです。
流石は徳川家って感じです。まさに「家宝」として守ってきたんでしょうねぇ。