「没後300年記念 英一蝶 風流才子、浮き世を写す」展

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没後300年記念 英一蝶 風流才子、浮き世を写す 美術展・写真展
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東京ミッドタウンにあるサントリー美術館で「没後300年記念 英一蝶 風流才子、浮き世を写す」展を観てきました。

この企画展では一部作品に限って写真撮影OKです。対象作品を確認して撮影してください。
また、三脚・フラッシュNGなどの注意事項にも従ってください。

展示内容

公式サイトの説明によると

2024年は一蝶の没後300年にあたります。この節目に際し、過去最大規模の回顧展を開催します。瑞々しい初期作、配流時代の貴重な〈島一蝶〉、江戸再帰後の晩年作など、国内外の優品を通して、風流才子・英一蝶の画業と魅力あふれる人物像に迫ります。

とのこと。
狩野派の絵画技術を学び、松尾芭蕉に俳句を指南してもらい、俳諧師の宝井其角や服部嵐雪らと親交を持っていたそう。さらには吉原などで幇間(太鼓持ち)をやって政財界の人々とも交流を持っていたのだとか。いや、多才な人だったんですね。しかも(?)、三宅島に流罪となって十二年間も島暮らしをしていたとか。
本展ではそんな波瀾万丈な人生の中で残した作品群の中から初期作、配流時代の作品、赦免となって江戸に戻ってからの晩年作が展示されています。

展示構成は以下の通り。

  • 第1章 多賀朝湖時代
  • 第2章 島一蝶時代
  • 第3章 英一蝶時代

京都で某藩の藩医の家に生まれ、藩主に伴って一家で江戸に移る。そこで狩野宗家の狩野安信に入門して絵画技術を学ぶ。また、俳諧にも通時、松尾芭蕉に学び、宝井其角らと交流し、「暁雲」と号して多くの句も残している。
画家としては「多賀朝湖」を名乗り、「雑画帖」シリーズとして「睡猫図」で愛らしい猫を描いたと思えば、寺院の天井画のような「龍図」なども手がけている。
「雨宿り図」では市井の人びとが大きな屋敷の門前で肩を寄せ合って雨宿りをしている光景を描いている。
つまりは、仏画、風景画、花鳥画、そして風俗画と、どんなジャンルでもイケていたということ。

三宅島へ流罪となった真の理由は不明らしい。しかし、配流中も江戸の知人からの発注や、島の有力者たちからの依頼で絵を描き続けている。幇間時代の記憶を頼りに風俗画を描いてみたり、島民のためには仏画や鍾馗様などの吉祥画を作成し、また神社に奉納するための絵馬も今に伝わっている。

将軍の代替わりの際の恩赦で江戸に戻ることができた。島暮らしは十二年に及んでいた。江戸に戻ってからも彼の創作意欲は充分だった。江戸に戻ってからは「英一蝶」を名乗り、晩年まで作品を作り続ける。狩野派の本流に戻る、と決意を新たにしたようだが、神仏画、花鳥画を描くものの、依頼に応じて風俗画も多く描き、俳諧の句集に挿絵も提供している。さらには幇間の仕事も再開したらしい。

今回の企画展では二点のみが写真撮影可となっている。それがこれらの屏風絵。様々な舞楽を描いている。狩野派に伝わる資料を用いたそうで、非常に細かく描かれた踊り手、楽器演奏者たちは百科事典の挿絵のようでもある。
これら屏風の裏側には全く主題の異なった唐獅子が描かれているが、そちらは撮影NG。

没後300年記念 英一蝶 風流才子、浮き世を写す
没後300年記念 英一蝶 風流才子、浮き世を写す

感想

英一蝶って、実は名前は知っているもののどういう作品を残した人なのか、どんな人生を送った人なのかよく知りませんでした。今回の企画展でそれらを知ることができ、これは面白い人だ、魅力的な作品ばかりだとなったのでありました。

神仏画や花鳥画も素晴らしいのですが、市井の人びとを描いた風俗画が面白い。
鳥居に扇子を投げて笠木と貫の間に通す遊びをしている人びとを描いた「投扇図」はとてもユーモラスで、当時の人びとの娯楽の様子を活き活きと伝えてくれている。こんなことをして遊んでいたのかという知識を得ることもできますし、なによりもダイナミックな動きをしている人びとの姿から楽しさがこちらにも伝わってくることに感心。見ているだけでこっちも楽しくなりました。
また、この雰囲気はネーデルランド絵画のブリューゲルが農民の姿を描いた作品と似たものを感じました。当時の暮らしをそのまま伝えているし、どんな服を着ていたのか、どんな職業・商売の人がいたのか、どんな生活をしていたのかが垣間見られるのは共通した特徴。歴史書では語られることのないその様子を知れることはなんとも興味深い。

これだけの絵画の才能があり、さらには俳諧でも活躍していて、その上で幇間までやっているところがまさに“人生を楽しんでいる”と言えましょう。もちろん島流しにあって苦労した訳ですが、それにもめげずにやりたいことをやり続けた生き方には憧れさえ感じてしまいます。
作品だけではなく、人としての魅力にも溢れた英一蝶。彼のことをもっとよく知りたいと思ったのでありました。

美術展情報

コメント

  1. 中野 潤子 より:

    今回六本木には行けませんでした。興味はあったのですが。ぶんじんさんの解説で満足です。