映画「八犬伝」 今の時代にこそ「正義は勝つ」というメッセージが響く

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八犬伝 映画・演劇
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試写会に参加して観賞してきました。

★ あらすじ

滝沢馬琴自身は「ただの戯作で、生活のために書いている」と言いつつ、「正義は勝つ」という勧善懲悪の世界を描くことに人生をかけた。その仕事部屋にやってくる友人の葛飾北斎に「南総里見八犬伝」の構想を語る。すると北斎はその場で挿絵の下絵を描いてみせる。馬琴はその絵によってさらなるイメージを膨らますことができ、八犬伝の創作に取り組んでいく。

そんな馬琴の創作風景と、八犬伝の物語の世界が、交互に描かれていく。悪女 玉梓によって安房国 里見家は他国から攻め込まれ、危機的な状況になっていた。藩主の里見義実は藁にも縋る想いで愛犬の八房に「敵の首を獲ってきたら娘を嫁にやる」と言ってしまう。そこから奇想天外な物語が始まってしまった。そう、八房は言いつけ通りに敵の首を咥えて返ってきたのだ。

馬琴は既に有名人となっていて、大名クラスの名のある人々も読者となっていた。しかし、創作に夢中になる余り、彼らが訪ねてきても追い返してしまう。そんな時に断りを入れる役割は息子の鎮五郎が担っていた。鎮五郎は献身的に父親の仕事を支えている。しかし、父のすすめで医者にまでなったというのに、鎮五郎は病に倒れてしまう。そんな中でも馬琴は筆を執り続ける。

捉えられ、首をはねられた玉梓。しかし、悪霊となって里見家憎しと災いをもたらし続けることに。頼みは、八房の妻となり、玉梓の悪巧みで命を落とした藩主の娘 伏姫が残した八つの玉。その玉は国中に飛び散るも、玉を持った志士を探し出せば大きな力になって里見家を救うと伏姫が命尽きる時に予言として残していったのだ。かくして、里見家の家臣たちは八犬士を探す旅に出て行った。

★ キャスト&スタッフ

  • 出演:役所広司、内野聖陽、寺島しのぶ、磯村勇斗、黒木華、大貫勇輔、立川談春、中村獅童、尾上右近、土屋太鳳、小木茂光、栗山千明、河合優実、渡邊圭祐、鈴木仁、板垣李光人、水上恒司、松岡広大、佳久創、藤岡真威人、上杉柊平、他
  • 監督:曽利文彦
  • 脚本:曽利文彦
  • 原作:山田風太郎
  • 音楽:北里玲二
  • 衣装:西原梨恵

★ 感想

滝沢馬琴の時代感覚として、当時はどういう想いでこの「南総里見八犬伝」を描いたのだろうか。それは想像するしかないわけだが、現代人の感覚で解釈するとこうだったかもという話。

最近、時代劇がちょっと見直されてきている気がするが、一時は勧善懲悪の単純な世界観が“マンネリ”とされ、廃れてしまっていた。善悪は相対的なもので、絶対的な正義などないんだという感覚は、ウクライナとイスラエルに対する米国の態度を見ると納得せざるを得ない。その一方で、漫画やアニメの世界では「ドラゴンボール」や「ONE PIECE」など、まさに“正義は勝つ”というストーリーで、世界中で人気になっている。私自身、子どもの頃に夢中になった仮面ラーダーやウルトラマンから“道徳”を学んだ気がする。

この作品も、色々考えずに素直な心で観るべきだろう。人生に悩みつつも自分の使命のようなものを見つけ、最期の時まで作品製作に取り組む滝沢馬琴。そして、怨霊に対して立ち向かう八犬士たち。その姿は「正義は勝つ」という世界であれと思わせてくれた。

役所広司、内野聖陽の飄々とした演技が笑いを誘いつつ、メッセージが素直に伝わってくる。そして、玉梓の怨霊を演じた栗山千明が良かった。悪役はとにかく恐ろしく、憎まれる存在でなければいけない。その演技のお蔭で八犬士たちの正義がより光っていた。

試写の前に、藤岡弘、藤岡真威人親子のトークコーナーがあった。藤岡真威人は、藤岡弘の息子ってのも大変なんじゃないかなと勝手に思ってしまったが、とても明るくてユーモアもある好青年。まさにイケメンだった。対して父親はまさに“正義の味方”を貫く人だった。「愛があれば世界は平和になる」、「正義は勝つ」ということを本当に信じているんだというのが分かった、信念の強さが溢れ出ていた。この映画を語るにこれほど相応しい人はいない。もちろん、理想論であって、単純すぎると批判できなくもないが、子どもの頃からのヒーロー(仮面ライダー)の言葉は素直に受け止めることができた。愚直なその姿勢、映画の中の滝沢馬琴そのものだった。

八犬伝

★ 公開情報

八犬伝

★ 原作本、他

映画の原作はこちら。

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滝沢馬琴の「南総里見八犬伝」の現代語訳はこちら。

Bitly
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コメント

  1. 中野 潤子 より:

    この映画は知りませんでした。俳優陣が素晴らしいですね。昔昔読んだストーリーがぶんじんさんの解説とともによみがえってきます。私は時代劇がとても好きです。

    • bunjin より:

      私はNHKの人形劇で夢中になった口です。原作を読んだことがなかったのでいつか読んでみようかと思っています。