東京都写真美術館 「現在地のまなざし」展

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「現在地のまなざし」展 東京都写真美術館 美術展・写真展
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恵比寿ガーデンプレイスにある東京都写真美術館で「日本の新進作家Vol.21 現在地のまなざし」展を観てきました。

この企画展では一部作品を除いて写真撮影OKです。撮影NGとなっている作品を確認しつつ、注意して撮影してください。
また、三脚・フラッシュNGなどの注意事項にも従ってください。

展示内容

公式サイトによると、

「日本の新進作家」展は、写真・映像の可能性に挑戦する創造的精神を支援し、将来性のある作家を発掘するために、新しい創造活動の展開の場として2002年より継続して開催しています。21回目となる本展では、社会、環境、人と人との関係性を自身の立ち位置から問い直し、写真を通して世界の断片を提示する5名の作家たちの試みを紹介します。

とのこと。

出品作家は以下の通り。

  • 大田黒衣美|Otaguro Emi
  • かんのさゆり|Kanno Sayuri
  • 千賀健史|Chiga Kenji
  • 金川晋吾|Kanagawa Shingo
  • 原田裕規|Harada Yuki

大田黒衣美

板ガムに線画を掘ったり、ちょっとひねったりして、それらを毛皮などの上に並べて“なんとなく”人の姿を作りあげている。写真作品ではあるけど、被写体も自ら創り上げているところで絵画や彫刻のような感じもする。非常におしゃれな印象だ。

「現在地のまなざし」展 東京都写真美術館

かんのさゆり

作家は宮城県出身。地元の風景を撮り続けているとのこと。どこにでもあるような造成地だったり、きれいな新築家屋の玄関や庭先が被写体だ。それを時系列的に見ていくと「ああ、新しい宅地が造成され、そこに次々と家が建っていくんだな」と言うことが見えてくる。でも「建売の割には個々の家のデザインがバラバラだな」なんて感じで小さな違和感を感じてくる。そこで初めて、作家が撮っているのは“震災後”の風景なんだと気づく。なるほど、だから背景がブルーシートなのか。。。

「現在地のまなざし」展 東京都写真美術館

元通りの形に再建されたのか、それとも新たなデザインなのだろうか。いずれにしても、これからもここで楽しく暮らしていくという意思が見えてくるような気がしてきた。

「現在地のまなざし」展 東京都写真美術館

千賀健史

お笑いのチョコレートプラネットがYoutubeチャネルで「悪い顔選手権」ってネタを披露している。いかにも犯罪者のような顔つきをするってネタだ。
展示された作品では、そんな犯罪者のような顔つきが並んでいる。さらには“事件現場”なんじゃないかと思えるようなアパートの一室だったり、路地裏だったり。たった1枚の写真から勝手にストーリーが浮かんできてしまう。

「現在地のまなざし」展 東京都写真美術館

捨てられてボロボロになったような作品群。新たに作られた作品だろうに、そこに何年、何十年という時の流れを勝手に感じてしまう。写真が持つ不思議な力だ。

「現在地のまなざし」展 東京都写真美術館

原田裕規

廃棄された写真プリントを許可を得て回収したもの。その実物がこのように積み上げられている。作家はこれらの写真から、その土地で暮らしている(いた)人々の人生が見えてくると解説で語っている。被写体となった人の中には既にこの世にいない人もいるだろうし、写っていた時とは生活ががらりと変わった人もいるだろう。
何気ない記念写真やスナップ写真もこうやって数を集めると歴史すら感じさせてくれるようになる。

「現在地のまなざし」展 東京都写真美術館

金川晋吾氏の作品は写真を撮り損ねてしまった。
三人でのアパート暮らしの様子、旅行に行って楽しんでいる様子、そんなシーンが続く。この三人はどういう関係なのだろうかと、ちょっと混乱が頭の中でぐるぐるし始める。二人ではないから夫婦や恋人といったカップルではないだろう。でも、その表情からは三人の関係性が読み取れない。異性だろうが同性だろうが、“カップル”は二人でなきゃいけないという固定観念があるからだ。鑑賞者にとって、これはかなりの挑戦を受けているんじゃないだろうか。
そんな戸惑いからか、写真を撮り忘れてしまったようだ。

感想

「日本の新進作家」シリーズは二十一回目だそうですが、このシリーズは毎回、全くテーストの異なる作家の作品が並ぶので観て楽しい。そしてその多くが“初めまして”の作家さん。こんな写真の撮り方もあるのか、こんなのも被写体になるのか、と驚かされることが多い。

今回もそれぞれ全く異なる作品が楽しめた。どれも、色々と考えさせてくれる作品ばかり。それも、感情的なものだったり、ストーリーを読み取りたくなったり、どれもじっくりと見入ってしまった。

それぞれに面白い作品が多かったので一番のお気に入りを決め難いけど、千賀健史氏の「窓のある風景 #2」(24番の作品)かな。どこの街にもありそうな風景なんだけど「なんかの映画かドラマで観たような記憶が。。。」と思えるような、不思議な一枚。

写真って面白いものですね。

写真展情報

  • 会期:2024/10/17 (Thu) – 2025/1/19 (Sun)
  • 開館時間 : 10:00 – 18:00(木曜日、金曜日は20:00まで))
  • 休館日: 月曜日、12/29-1/1
  • 料金 : 一般700円 学生 560円 中高生・65歳以上 350円 小学生以下および都内在住・在学の中学生は無料
  • 公式サイト : 東京都写真美術館
  • 図録 : 2,800円(税別)

コメント

  1. 中野 潤子 より:

    またいい写真展をご紹介いただいて感謝です。写真と感想付きなので一層よくわかりました。若い方の感性にハッとさせられます。よい新年をお迎えください。

    • bunjin より:

      写真撮影禁止の場合、確かに説明に窮します。批評・描写の力をもっと付けないといけませんね。