恵比寿ガーデンプレイスにある東京都写真美術館で「ロバート・キャパ 戦争」展を観てきました。
展示内容
公式サイトによると、
本展は、東京富士美術館が所蔵するキャパの約1000点のコレクション・プリントから、“戦争”に焦点を当てた作品約140点を厳選して展示します。
昨今のロシアとウクライナ、パレスチナやレバノンとイスラエル等の地域における紛争、 シリアのアサド政権崩壊による影響など、世界の現状は、残念ながらキャパの願った「人間を取り捲く状況を少しでもよいものにしよう」という思いとはほど遠いものです。それ故に戦後80年のいま、あらためてキャパの写真証言を見直すことの意義があります。
とのこと。
展示構成は以下の通りで、ほぼ年代順の構成となっている。
- 第1章 ジャーナリストを目指す
- 第2章 スペイン内戦
- 第3章 日中戦争
- 第4章 第二次世界大戦 戦時下のイギリス
- 第5章 第二次世界大戦 北アフリカ
- 第6章 第二次世界大戦 イタリア上陸
- 第7章 第二次世界大戦 ノルマンディー上陸
- 第8章 第二次世界大戦 パリ解放
- 第9章 第二次世界大戦 ドイツ降伏
- 第10章 イスラエル建国
- 第11章 終焉の地 インドシナ半島
展示されている最初期の作品は1932年11月に撮られた「デンマークの学生に向かいロシア革命について講演するレオン・トロツキー」で、最後の一枚は有名な「ナムディンからタイビンへの道」で、キャパの命日となってしまった1954年5月25日の作品だ。この最後の一枚を撮った後に地雷に触れてしまい、彼は亡くなっている。その間、上記の通りにヨーロッパ、アフリカ、アジア、中東と世界中の戦場を駆け回っていた。
ロバート・キャパの写真は、戦況を伝えるだけの“ニュース映像”ではない。もちろん、戦場の兵士の姿を多く写しているが、銃を構えている時だけではなく、塹壕でタバコを吸っている姿や、地元商人たちとやり取りしている様子など、彼らの“日常”を捉えたものも多い。
そして、爆撃で瓦礫となった家の前で座り込む女性や、燃える家から逃げ出す農夫たち、砲弾の後が生々しい壁の前で無邪気に遊ぶ子どもたちの姿など、戦場での市民の姿や日々の生活をも多く被写体としている。一方で、パリ解放後、ドイツに加担していた女性を市民たちが引きずり回しているシーンなど、被害者と加害者の区別ができるのか疑問を投げかけるようなものもある。
キャパの作品は普遍的なテーマに貫かれていて、そのメッセージは新たな混迷の時期を迎えている我々に強く届くものとなっている。
感想
ロバート・キャパの作品展はこれまでも何度か観てきましたが、改めて年代順に観ていくと考えさせられるものが多かったです。そして、彼の一貫した戦争に対する見方・想い、そして我々へのメッセージを強く感じました。
人気のロバート・キャパですから観たことのある作品も多かったのですが、「イスラエル建国」に関する作品群は今も続く問題の(直接的な)始まりを改めて教えてくれるものでした。キャパの作品は、祖先の暮らしたちに“戻って来た”人々の側から見たもの。一方では大国の武力を背景に住んでいる土地を追い出された人々もいるけれども、それを捉えた写真はない。戦場での撮影はどうしても片方からの立場で“参戦”することになり、それは彼のせいではないけれども、そこに限界があったのも事実だろう。
キャパならばきっと、双方の立場・目線で戦場を捉え、さらに普遍的な人々の営みを写し撮りたかったんじゃないかなと勝手に思ってしまう。もちろん、彼には彼の思想信条があったろうから、完全に“客観的”な立場を取ることはできないのかもしれないが、彼の作品を見進めて行くうちにそんな勝手な想いを抱いてしまった。
写真展情報
- 会期:2025/3/15 (Sat) – 2025/5/11 (Sun)
- 開館時間 : 10:00 – 18:00(木曜日、金曜日は20:00まで)
- 休館日: 月曜日、2025/5/7 (2025/5/5は開館)
- 料金 : 一般1,200円 学生・65歳以上 1,000円 高校生 800円 中学生以下は無料
- 公式サイト : ロバート・キャパ 戦争
- 図録:
コメント
今回もいいものをご紹介いただきまました。例年だと4月に1度上京しているのですが。是非行ってみたいですね。
キャパの作品の歴史を概観できるのでおすすめです。ぜひ。