★ あらすじ
成都(四川省)に暮らす主人公のアン・ランは、看護師だ。だが、医師になる夢を持ち続けていて、北京へ行くべく、勉強に勤しんでした。そんな彼女は、一人っ子政策ゆえに親から「望まれた子ども」ではなかったため、早くから自立していた。一方で彼女の親は「長女は障害があるので、二人目を希望」し、望み通りに男の子を授かっていた。(もちろん、)アン・ランに障害はなく、二人目の子ども(男の子)が欲しかった親の嘘であった。
ところが、そんな両親が自動車事故に合い、亡くなってしまう。そして、その男の子(ズーハン)が一人残されてしまったのだ。親類からは「姉であるアン・ランが面倒を見るべきだ。姉なのだから」と言われてしまい、アン・ランは戸惑う。自分の夢を叶えるためには、まだ幼稚園に通う年の弟は邪魔でしかなかった。アン・ランは弟を養子に出すことにする。
だが、そうすぐには養子話は決まらない。その間、渋々と弟の面倒を見なければならなかった。両親の死を理解できないズーハンは寂しさからワガママばかり。朝食には(母が作ってくれた)肉まんじゃなきゃ嫌だと駄々をこね、泣きわめく。
しかし、そんな弟を世話していくうちにアン・ランはズーハンが愛おしく思えてきたのだ。彼女は自分の夢を貫くのか、それとも。分かれ道が迫ってきた時に彼女の選んだ答えは。。。
★ キャスト&スタッフ
- 出演:張子楓(チャン・ツィフォン), 金遥源(ダレン・キム), 肖央(シャオ・ヤン), 朱媛媛(ジュー・ユエンユエン), 梁靖康(リャン・ジンカン)
- 監督:殷若昕(イン・ルオシン)
- 脚本:游暁頴(ヨウ・シャオイン)
★ 感想
何の不自由もなく、自由に暮らしている人はほとんどいないだろう。誰もがしがらみに纏わり付かれ、誰かに依存して生きている。どんな時代、国、社会に生まれたとしても、その場の状況やルールに従わざるを得ない。
男尊女卑の考え方は非常に根深い。「家を守る・継続させる」ために男の子の誕生が望まれる訳だが、家の存続だけだったら女の子が継げば良いだけだ。そうならないのは、”嫁ぐ”という漢字が示すと通りに、女性が家を移る(姓を変える)のが“当たり前”だと思われているからだ。
この“常識”は日本も、中国も変わりないようだ。だが、中国ではそこに「一人っ子政策」が上乗せされた。男が大事、家が大事、子どもは一人だけとなれば、女の子が敬遠されるのは目に見えている。なんでこんなルールを作ってしまったのか、
と、そんな一般論はさておき、その理不尽な状況に置かれてしまったらどうしていけば良いのだろうかを考えさせてくれた話だった。中国の社会背景をベースにしてはいるけど、上記の通りにどこの国だろうと、時代だろうと、似たような状況はあるだろう。現在の日本も然り。普遍的な問題をテーマにしている。
主人公はそんな状況に抗い、自分の意思を通そうとする。それと対比するように、彼女の叔母はそれを受け入れ、自分の夢を捨てて家族のために生きてきた。どちらも楽な道ではない。だからこそ、二人が互いの気持ちをぶつけ合うシーンは迫力があった。そして、最後の選択の後の主人公の表情は達観したものがあった。
試写上映後のトークショーで、この映画が公開されると若者たちからSNS上で色々な反響があったと聞いた。そして、「彼女は自分の夢を捨てずに我が道を行くべき」との声が多かったそうだ。私もその意見に賛成だ。ある意味でハッピーエンドとなっているのだが、それ故に「いや、そうじゃないだろう」と言いたくなった人が大勢いたということかな。「そんな終わり方でまとめないでくれ」と。
私もそうだった。ハートウォーミングではあるのに、なんかモヤモヤした気持ちが見終えてから残っている。
それにしても、さすがは四川省が舞台。肉まんにまで花椒を入れるらしい。機会があったら食べてみたいものだ。
★ 公開情報
- 公開日:2022/11/25
- 主な上映館:ヒューマントラストシネマ有楽町, 新宿ピカデリー, その他全国公開
- 公式サイト:映画『シスター 夏のわかれ道』公式サイト
- 受賞記録:2021年中国金鸡奖, 2021年長春映画祭 など
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