菊池寛実記念 智美術館でSNSユーザー向け「現代のやきもの 思考するかたち 菊池コレクション」展鑑賞イベントに参加してきました。
特別な許可をもらい、写真撮影しています。普段は撮影NGですので注意してください。
展示内容
公式サイトの説明によると
このたびの「現代のやきもの 思考するかたち 菊池コレクション」展では、現代陶芸の「かたち」に注目し、智が蒐集した作品に新収蔵作品を加えた約50点の作品をご覧いただきます。 やきものといえば、一般的には皿、鉢、花器などの形を想像することでしょう。しかし、現代の陶芸作品には多彩な形があり、その形を成り立たせている背景に思いを巡らすと、そこには作家の思考が存在していることがわかります。
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とのこと。
美術館および関連企業の所蔵品による展示。上記説明にある通り、現在も作品収集は進めていて、初めましての作品も今回、展示されています。その一つがこちら。
山高帽とステッキ。これも陶芸作品です。
空き缶? 筒の部分は普通に轆轤で作成し、それに蓋を付ける形で作られたのだとか。形状は空き缶なのに、材質は金属ではなくて陶器だという違和感。同時に、金属製の空き缶にはない、不思議な温かみを感じさせてくれる。過去の知識や経験に反する存在は、最初の戸惑いの後に強い好奇心を呼び起こさせる。
釉薬という陶芸ならではの着色手段は偶然に左右されてしまうところもあるが、その一期一会の感覚も観る者に何かを考えさせるのかも知れない。
エーゲ海に浮かぶ島の街並みのような造型。電柱のようなポールまで立っている。誰かの声が聞こえそうだが、ドールハウスなどとは違ってこれは陶芸作品。窓から家を覗き込むことはできない。高い空の上から街を眺めているようなものだろうか。
割れた卵? 中は真っ赤に染まっている。何かが生まれてくるのか、それとも傷を負って死なんとしているのか。
砂に埋もれた書物? 「砂の聖書」と題されたこの作品は、これでももちろん陶芸作品。シルクスクリーンの技法を使ってちゃんと“印刷”もされていたりします。
「表裏」と題された作品。どっちが表でどっちが裏?人の裏表を表現しているそうですが、ほとんど同じに見える。でも、よく見ると右側はスリットが入っている。さて、これは何を意味するのか?
小さな孔が無数に開けられていて、光が透き通る感じ。陶器なのにキラキラしているところが面白い。
暗闇に浮かぶ街角の風景?壁と階段、階段と扉。そして王座。展示の仕方と相まって幻想的。
感想
久しぶりの陶芸作品展。何とも言えない造型と質感。彫刻作品とはまた違った面白みがあります。
菊池寛実記念 智美術館のお蔭で現代工芸に触れるようになり、特に陶芸作品に対してのイメージががらりと変わりました。父が昔、“蕎麦猪口(そばちょこ)”などをコレクションしていて、いわゆる器としての陶芸品はよく目にしていて、使っていた訳ですが、そうではない作品があるというのが驚き。
どう考えても自由に形を作りたいのであれば、もっと簡単な彫刻などの方がいいはず。陶芸だと柔らかい粘土で形を作るのが大変だし、焼成した時に変形したり壊れてしまったりするんだから。なのに、敢えて陶芸でそれをするというそのチャレンジ精神が凄い。
企画展のタイトルが「思考するかたち」となっていますが、陶芸作家の頭の中を表したような不可思議な形の作品群という意味もありそうです。そして、観ている我々が思考する、いや、思考させられるということなのかもしれません。
この作品、学芸員でさえどっちが上で下なのか、接地面がどこなのか分からなくなっちゃったのだとか。うむ、別の意味で考えさせられた訳ですね。
陶芸って、釉薬の使い方などによって「土」そのものの質感を持たせることもできるし、金属と間違えてしまうような感じにもなるし、それだけでも面白い。そこに、「どうやってこの形を作ったの?」と思わせる、謎解きというか、クイズのような面もある。
例えば、一枚目の写真の“渦巻き”は、轆轤で作った薄い粘土を、円錐形の土台に巻き付けてこの形にしたのだとか。土台に巻き付けたまま焼成したので、土台自体も作るのが大変だったようです。タイトルが「颪(螺旋)」と名づけられているのですが、確かにびゅーっと吹き付けるような風の流れを思い起こさせてくれます。
現代アートとしての陶芸、可能性はまだまだありそう。今回も楽しませてくれた企画展でした。
美術展情報
- 会期 : 2023/1/3(Tue) – 3/19(Sun)
- 開館時間 : 11:00 – 18:00
- 休館日 : 月曜日 (月曜日が祝日の場合は開館し、翌火曜日が休館日)
- 料金 : 一般1100円、大学生800円、小・中・高生500円
- 公式サイト : 最新の展覧会|展覧会|菊池寛実記念 智美術館
- 参考書
コメント
陶芸は好きでよく見て回りましたが現代アートとしての陶芸はいまいち馴染めません。まだ見慣れていないのだと思います。
この美術館にちょくちょくお邪魔するようになって、現代陶芸が面白いなと思えるようになってきました。